野田線（東武アーバンパークライン）で使用されている8000系および10030系の置き換え用として、2024（令和6）年から近畿車輛で製造された。

東武鉄道では「人にやさしく　人と地域がともに輝きつづける社会」の実現を事業計画として掲げており、安全で快適な車両であることに加えて「子育て世代のご家族の皆様が快適にご利用いただける車両構造」をコンセプトとし、さらにサスティナビリティの観点から編成両数を6両編成から5両編成として、導入予定の25編成のうち18編成は3号車に60000系の5両編成への短縮の際に生ずる1両を改造・編入の上で組み込むこととしている。

編成は柏方5号車からクハ81500形（Tc1）-モハ82500形（M1）-サハ83500 形（T1 / T2 / T3）-モハ84500形（M2）-クハ85500（Tc2）の2M3Tで、T2車は施設モニタリングシステム搭載対応、T3車は60000系からの改造編入車（サハ64600形改造）となる。

2025（令和7）年3月8日より営業運転を開始した。

車体

車体構体はオールアルミダブルスキン構造で、エクステリアは60000系で採用された「フューチャーブルー」と「ブライトグリーン」を基調とし、先頭形状はエッジを際立たせて先進性を表現している。また、子どもが前面展望を楽しめるように、前面非常扉の位置を低くし、車内の乗務員扉の窓も低くして、子ども用の手すりを配置している。

客室内は「リビング」をテーマに『「ただいま」って言いたくなる車内。』として、乗車した瞬間に気持ちが安らぐような落ち着いた車内空間を表現し、腰掛は暖色系を、車端部の化粧板は木目調としている。

旅客案内表示器は17.5インチの2画面LCDで、全扉上ではなく、千鳥配置とし、データ伝送は無線としている。 また、4号車の両車端部に子供部屋をイメージした「たのしーと」を設置し、ベビーカーも利用できる構造としている。

運転台の主幹制御器は東武の一般形車両では初のL型左手ワンハンドルマスコンを採用している。また、将来のワンマン運転に対応するため、側面の車側確認用カメラによる映像を運転台上に設けたモニタで確認できるようにしている。

主要機器

制御装置はフルSiC素子適用2レベル方式電圧PWMインバータを採用したVVVFインバータ制御装置で、三菱製のMAP-204-15V369、補助電源装置はIGBT式のSIV装置（3レベル式）INV192-H0を1編成あたり1台搭載する。主電動機はTM24（250kw）で、本格搭載としては民鉄初となる同期リラクタンスモータを採用した車両推進システム（SynTRACS）を導入している。これは、消費電力量の低減、回転子にレアアース永久磁石を使用せずに鉄心のみとして省資源化・省メンテナンス化を図った同期リラクタンスモータ（SynRM）とフルSiC素子を採用して高出力化と電力損失の低減を図った駆動用インバータとで構成したものである。また、リチウムイオン二次電池（SCiB）とSIV装置を組み合わせた車上バッテリシステムを搭載し、回生ブレーキで得られた電力をSIV装置を介して車上バッテリに充電し、省エネルギー化を図っている。電動空気圧縮機はスクロール式のオイルレスタイプを採用、1台3ユニット構成で1ユニットがダウンした場合に残りのユニットで運転継続できるよう冗長性を持たせている。ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ装置である。台車はボルスタレス台車で電動台車はSS195M（東武型式TRS-24M）、付随台車SS195T（東武型式TRS-24T）。

Tc2車には統合型保安装置を搭載し、東武ATS機能（TSP-ATS）、TASC制御機能、ドア誤開扉防止・ホームドア連動機能を有し、こちらも2重系構成により冗長性を持たせている。

集電装置はシングルアーム式のPT7112-Cで、電動車に各1基搭載、冷房装置は集中式50,000kcal/hで、各車屋根上に1基搭載している。 また、安全性向上策として、25編成中2編成（81504F・81505F）を施設モニタリングシステム（愛称「みまモニ」）対応編成としている。これは3号車（サハ83504・83505=予備編成として落成時は一部機器を搭載）に架線モニタリング装置、架線計測装置、レールボンドモニタリング装置、軌道変位モニタリング装置、軌道材料モニタリング装置、地上子検測装置の各装置を搭載し、営業用車両の走行運転時に施設状態を検測・モニタリングするシステムである。