東京と伊豆を結ぶJR東日本の特急列車としては185系特急形直流電車を使用した「踊り子」、251系特急形直流電車を使用した「スーパービュー踊り子」が運転されていたが、前者は国鉄時代に、後者は平成時代初頭にそれぞれ製造されたため、老朽化および陳腐化が否めない状況であった。そこで、「踊り子」については中央本線および房総地区で使用されてきたE257系特急形直流電車をリニューアルして転用することとし、「踊り子」よりもランクが上の特急列車として、「大人のＩＺＵ　本物のＩＺＵ」をコンセプトに、新たな特急形車両を開発することとなり、本系列が誕生した。愛称は、宝石のサファイヤのように青く輝く美しい伊豆の海と空をイメージさせ、上質・高級で優雅な旅を楽しめるようにとの願いから、サファイヤを意味するフランス語「サフィール」を冠した「サフィール踊り子」と命名された。 8両編成で、東京・新宿方8号車からクロE261-1～(Tsc)＋モロE261-201～(Ms)＋モロ260-1～(M2s)＋モロE261-1～(M1s)＋サシE261-1～(TD)＋モロE261-101～(M1s1)＋モロE260-101～(M2s1)＋クロE260-1～(Tsc')である。RS1・RS2編成の2編成が2019（令和元）年11月に製造されたが、1～3号車が川崎重工業、4～8号車が日立製作所製である。伊豆急下田方1号車がプレミアムグリーン車、2・3号車がグリーン個室、4号車がカフェテリア車、5～8号車がグリーン車と、座席車はすべてグリーン車以上となっており、編成定員は164名である。車両のトータルデザインは、工業デザイナー奥山清行氏が代表を務める「KEN OKUYAMA DESIGN」が担当、カフェテリア車（ヌードルバー）のプロデユースとデザインは、中村貞裕氏が代表を務める「TRANSIT GENERAL OFFICE」が担当し、「傳」料理長 長谷川在佑氏が監修した伊豆への旅を彩るヌードルメニューなどや飲み物が用意され、スマートフォン等で専用サイト「サフィールPay」にアクセスしての事前予約も可能である。大宮総合車両センターに配置され、2020（令和2）年3月14日ダイヤ改正から東京・新宿-伊豆急下田間で運転を開始した。

車体・客室

　車体はアルミダブルスキン構造で、側窓上部に天窓を有する。エクステリアデザインは、「伊豆の圧倒的で雄大な自然」を表現し、塗色は伊豆の海と空をイメージした「伊豆アズール」を基調として、側窓・天窓部に溶岩地形である城ヶ崎海岸の黒々とした岩石をイメージした「城ケ崎グレー」、天窓下部には伊豆の砂浜が太陽の光を受けて金色に輝く様子をイメージした「白浜ホワイト」のラインを、先頭車と4号車山側、5号車海側の側面には宝石のサファイヤをイメージした「Saphir ODORIKO」のロゴを配している。 先頭部は非貫通構造で、全面は大型曲面ガラスとなっている。 1号車のプレミアムグリーン車はJR東日本初となるクラスで、海側に1＋1列の電動リクライニング機構と電動レッグレスト付きの本革によるシートをシートピッチ1,250mmで配置、テーブル、読書灯、コンセントを備えており、ゆったりとしたプライベート空間とくつろぎの空間を表現している。座席の回転角度は自由に設定でき、天窓上部の眺望を確保するため、荷棚はなく、座席下と大型荷物置き場に荷物を置けるようになっている。 2・3号車のグリーン個室は、落ち着いてくつろげるカフェをイメージしており、各車とも海側に4人用と6人用個室が2室ずつ配置され、山側が廊下となっている。4人用個室は2人掛けソファを向かい合わせに配置、6人用個室は窓側に大型テーブルを設置して1人掛けと2人掛けソファを各2個配置している。個室にはコンセントとUSB端子が設けられている。 5～8号車のグリーン車は、2＋1列のリクライニングシートが1,160mmピッチで配置されており、伊豆の自然をイメージしたリラックスできる空間をコンセプトとしている。荷棚は眺望を確保するよう、ガラス製となっている。なお、各車に電源コンセントを備えているほか、無料公衆無線LANサービスが提供される。

主回路装置および機器

　主制御装置はSC121で、全ての電動車に装備している。両先頭車には補助電源装置（SIV）SC106Aを装備する。パンタグラフはシングルアーム式のPS33Hである。主電動機はE235系と同様のMT79で、台車は軸梁式ボルスタレス台車でヨーダンパと軸ダンパ付き、フルアクティブサスペンションを装備しており、電動車がDT88，付随車がTR272とTR272A(駐車ブレーキ付き)である。