121系近郊形直流電車
概説
1988(昭和63)年の本四備讃線(瀬戸大橋線)開通時に予讃本線高松-観音寺、土讃本線多度津-琴平間が電化されることになったが、国鉄分割・民営化直前の1987(昭和62)年3月に暫定的に予讃本線高松-坂出、丸亀-観音寺、および土讃本線多度津-琴平間が電化開業することになり、同区間に使用する普通列車用として、1986・87(昭和61・62)年に製造された近郊形電車が121系である。
高松方からクモハ121形(Mc)とクハ120形(T'c)の2両編成を基本とし、各19両が製造された。
車体は前面貫通形両開き3扉の軽量ステンレス車体が新製されたが、裾絞りがなく、側窓は一段上昇式となって行先表示器は省略、さらに便所設備も省略されて新製価格の低減が図られた。側出入口は半自動対応が可能で、後に押しボタンも追設されている。
台車(DT33A、DT21T)、主電動機(MT55A)、MG(70kVA)、パンタグラフ(PS16)などの主要機器は廃車発生品が活用されている。M方式で、性能的には105系に準じており、分割併合作業の迅速化を図るため自動電気連結器を装備している。客室内はセミクロスシートであるが、113系などと異なり、クロスシートの通路側背もたれ部分が斜めとなっている。定員は両形式とも118(座席62)名である。冷房装置はAU75よりも容量が小さく33000Kcal/hのAU79Aとなっている。
高松に配置されたが、一段上昇式の窓である点などから本四備讃線(瀬戸大橋線)には運用されていない。
なお、車体帯色は当初赤14号であったが、JR四国に承継されて同社のコーポレートカラーの青26号に変更されている。
1992(平成4)年には予讃線(JR四国では1988年6月1日より「本線」の名称を廃止)観音寺-新居浜間電化開業に伴い、狭小トンネル通過対策としてMc車のパンタグラフが7000系と同様のS-PS58形に換装された。
補助電源装置については、1998~2001(平成10~13)年にMGからSIVへの換装が行われたが、クモハ121-1~17についてはMc車のMGを撤去してSIV(S-SIV70/70kVA)
に交換、クモハ121-18・19についてはMGを撤去の上、クハ120-18・19に111系の廃車発生品のSIV(S-SIV90/90kVA)
が装備された。(その後、他車と同じSIVをクモハ120-18・19に搭載して、クハ120-18・19のSIVは撤去された模様)
第1・2編成については2011(平成23)年にワンマン化改造が行われ、ワンマン運転用設備(運賃箱、運賃表示器、整理券発行機など)の設置のほか、スカート、転落防止幌、側面行先表示器、出入口表示器の取付、客室内座席配置の変更(7000形などに準じたセミクロスシートとロングシートの千鳥配置)や車椅子スペースの設置などが行われ、車体帯色は登場時の赤14号に変更された。
2016(平成28)年には、第3編成が制御装置のVVVF化、主電動機の交流化、台車の変更(川重製新型台車「efWINGR」)、カラーリング変更などのリフレッシュ工事を行い、新系列の7200系(7203+7303)となって出場した。2019(平成31)年2月までに121系全車の施工が完了し、クモハ121形とクハ120形は形式消滅した。
クモハ121-1~19
帯色は変更されたが、原形に近い頃。
クモハ121-15(四カマ)
1987.1新製→7215 2017.9改造
1989年1月2日 高松駅にて
側出入口の押ボタン取付け、パンタグラフ換装、補助電源装置のSIV化などが行われた後年の姿を示す。
クモハ121-14(四カマ)
1987.1新製→7214 2016.12改造
2015年8月28日 伊予西条駅にて
2・4位側を示す。
クモハ121-13(四カマ)
1987.1新製→7213 2016.10改造
2015年8月29日 琴平駅にて
ワンマン化改造車。外観上でも、スカート、行先表示器、出入口表示器取付、帯色の変更などで印象が大きく変わっている。
クモハ121-2(四カマ)
1987.1新製→2011.12ワンマン化改造→7202 2019.2改造
2015年8月29日 琴平駅にて
クハ120-1~19
クハ120-19(四カマ)
1987.1新製→7319 2017.3改造
1989年1月2日 高松駅にて
クハ120形については、側出入口の押ボタンが取付けられた程度で製造当初と大きく変わっていない。
クハ120-14(四カマ)
1987.1新製→7314 2016.12改造
2015年8月28日 伊予西条駅にて
2・4位側を示す。
クハ120-16(四カマ)
1987.1新製→7316 2017.1改造
2015年8月28日 多度津駅にて