JR西日本では、上質な設備・サービスを提供する「TWILIGHT EXPRESS瑞風」を運行していたが、それとは別にカジュアルな旅を楽しめる列車として「新たな長距離列車」を導入することになり、117系近郊形直流電車6両1編成を種車に2020（令和2）年1月に吹田総合車両所で改造された。

愛称は「WEST EXPRESS 銀河」で、編成は米原方6号車からクロ117-7016（クハ117-16=種車、以下同じ）＋モハ117-7032（モハ117-32）＋モハ116-7032（モハ116-32）＋モハ117-7036（モハ117-36）＋モハ116-7036（モハ116-36）＋クロ116-7016（クハ116-16）で、号車ごとに客室設備が異なる。

デザイン

デザインは㈱イチバンセン代表取締役の川西康之氏が担当し、デザインコンセプトは「多様性」「カジュアル」「くつろぎ」をキーワードとされた。愛称の「銀河」は西日本エリアを宇宙に見立て、各地の魅力的な地域を星になぞらえ、それら地域を結ぶ列車であるという意味が込められている。

車体塗色は西日本の海や空を表現した瑠璃紺（るりこん）色をベースとし、窓下に白い細帯を配して長距離の旅をイメージさせるとともに、「遠くへ行きたい」という憧れを叶える列車であることを表現している。ロゴマークは西日本エリアの魅力的な地域を星に見立て、その星々の間を列車が移動する様子を曲線でデザインすることで、魅力的な地域と乗客を結ぶ列車であることを表現している。

インテリアデザインはストライプを基調とした「シンプル・カジュアル」で、客室部はカーペット敷、出入台部はフローリングとなっている。

車両設備

 各車共通で側扉は1号車の後位、2～6号車の前位の1ヵ所を撤去し、側窓は一部を除いて複層固定窓に変更、雨樋を上部に移設して車体外観の見栄えを向上させている。 また、車両異常挙動監視装置の設置、3・5号車のパンタグラフ増設、運転室への簡易モニタ装置設置、前照灯・尾灯のLED化、表示器類の液晶表示器化、夜行運転時の騒音・振動軽減のため2号車の空気圧縮機のスクロール式への更新、蓄電池・水タンク・汚物タンクの更新などを行っている。

各車の概要

1号車（クロ116-7016）はグリーン車指定席「ファーストシート」で、1人用座席が向かい合うボックスシートを片側8組ずつ配置し、ボックス中央には大型折畳み式テーブルとテーブルランプを備える。定員16名だが、夜行運行時には、可動式背もたれを倒すことでベッド状に転換することができ、その際は定員8名となる。前位乗務員室後部にグリーン車専用のラウンジを設置、後位側出入口は撤去された。

2号車（モハ116-7036）は普通車指定席で、当初は女性専用車として設定された。前位側は側出入口を撤去して普通車指定席（ノビノビ座席）「クシェット」を配置。かつての簡易寝台のように横になってくつろぐことができるもので、グループでの利用がしやすいようにひとつのボックスに上下2段の計4席を設置したものが3組配置されている。中央部は2人掛けリクライニングシート（一部女性席）を互い違いに1・3位側4組、2・4位側3組配置している。4位側出入台前後には女性更衣室を2室設置している。2号車の定員合計は26名。

3号車（モハ117-7036）は普通車指定席で、前位側は側出入口を撤去して家族利用に適したコンパートメント「ファミリーキャビン」を配置しており、大型ベンチシートを配した約5㎡の半個室を2室設けている。ベンチシートの座面はマットレスのように広げることができる。（夜行列車の場合は1室のみ販売）中央部はブルーを基調とした座席カラーの2人掛けリクライニングシートを片側5組ずつ配置している。後位にはテーブルランプに照らされた落ち着いた雰囲気のフリースペース「明星」を設置した。3号車の定員合計は28名。

4号車（モハ116-7032）は全体がフリースペース「 遊星（ゆうせい）」となっており、腰掛・テーブルを設置、夜行運転時にも減光せず自由に利用できる。前位側は側出入口を撤去してグループ用のボックス席を配置し、将棋やチェスなどのボードゲームが楽しめるよう盤面が刻印されている。また、外部入力可能なオーディオ装置を設置しており、特産品販売や観光PRなど沿線の魅力を伝えるイベント開催が可能である。3位側に洋式便所、4位側に洗面所と男子用小便所を、また、編成中当車にのみAEDを設置している。

5号車（モハ117-7032）は前位側出入口を撤去して2号車と同様の普通車指定席（ノビノビ座席）「クシェット」を配置、上下2段の計4席からなるボックスを配置しているが、うち2席は車椅子対応としており、定員18名である。1位側に荷物置場、3位側に洗面所、4位側に車椅子対応大型便所を設置している。

6号車（クロ117-7016）はグリーン個室「プレミアルーム」で、1室2～3名用個室4室、1名用個室1室の計5室配置している。個室空間を台形として、斜めに配置されたベンチ型の座席から車窓を楽しめるようにしている。座席は可動式の背もたれを倒すことでベッド状に転換する。部屋はナンバー式のルームキーにより施錠可能である。定員は昼行時最大13名、夜行時9名。前位側は側出入口を撤去してフリースペース「 彗星（すいせい） 」を配置している。3位側に洋式便所、4位側に洗面所と男子用小便所を設置している。

おわりに

改造前と同様に吹田総合車両所京都支所に配置され、営業運転開始は新型コロナウイルスによる感染症の流行により延期されたが、2020（令和元）年9月11日より開始され、山陰、山陽、紀南方面への列車が設定されている。