キヤ141系電気・軌道総合試験車
概説
JR西日本の総合試験車で、国鉄から承継された軌道検測車マヤ34形、電気検測車キヤ191系の置換のため製造された。
当初、マヤ34形の置換については客車による置換え案が検討されたが、機関車による牽引を必要とするため非効率であること、さらに207系電車を改造して直流電化区間を電車として走行、交流電化区間と非電化区間を発電機関等からVVVFに電源を供給するDECも検討されたが、2両編成では要求仕様を満たすことが困難であることから見送りとなった。
その後、電気検測車キヤ191系の置換えも併せて行う事となり、気動車による総合検測車とするよう方針転換され、軌道・信号通信関係の総合試験車として2006(平成14)年に2両編成2本が新潟トランシスで製造された。
編成は下関方よりキヤ141(Mzc)+キクヤ141(Tzc)で、Mzcに信号通信関係の検測機器、検測機器用のエンジン発電機が搭載されたほか、便・洗面所が設置されている。Tzcには軌道関係の検測機器が搭載されている。また、最高運転速度は100km/hであるが、将来クモヤ443系の置換時には、電力測定装置を搭載した中間車を増備して連結することが考慮され、その際には減速機を交換して120km/h運転対応を可能としている。
設計方針として、キハ187系、キハ126系と車両システムの共通化を図りながら、運転取扱や保守面においては電車システムとの標準化が可能な限り行われ、運転室機器配置の統一やエンジン以外の部品の共通化が図られている。
車体は構体・台枠に軽量ステンレス鋼を使用、前面強化のため前頭部は板厚を厚くしている。先頭構体は一般構造用圧延鋼材の溶接組立とし、外板には腐食を考慮して高対候性圧延鋼材を使用している。乗務員と測定用カメラの前方視界を十分に確保するため、前面は非貫通構造となっている。検測機器の配線を床中に収めるため、高床構造となり、床面高さはMzcが1,290mm、Tzcが1,420mmとなっている。カラーリングは、前頭部は窓周りを黒色とし、その周囲を事業用車両の位置付けから黄色、
地色は銀色としている。ステンレス構体の側面は窓周りに黄色のカラーフィルムを貼り付けている。
Mzc車は前位寄りから運転室、発電機室(発電装置、燃料タンク、配電盤箱などを搭載)測定室(信号設備検測装置、通信設備検測装置を搭載)、出入台、洋式便所・洗面所の順に配置し、測定室部分の側窓は固定式、その他は一部が下降窓となっている。
Tzc車は前位寄りから運転室、測定室(軌道検測装置、軌道中心間隔測定装置=TDM装置、軌道画像測定装置を搭載)、休憩室の順に配置し、
軌道中心間隔測定装置取付部分の側面と床に測定用窓が設置されている。休憩室には折りたたみ可能なベッドと打合せ用テーブルが設置されている。
Mzc車の駆動機関はキハ187・126系に準じたSA6D140H(450PS/2,100rpm)を2基搭載し、変速機はDW21Cとなっている。ブレーキ方式は電気指令式空気ブレーキで、機関ブレーキ、排気ブレーキを有し、台車はMzc車がキハ126系のWDT60を基本としたWDT64、Tzc車が軌道検測装置の取付が可能なWTR247となっている。また、キハ187・126系に搭載されている列車情報制御装置(TICS=Train
Information Control System)が改良の上、搭載されている。
2編成とも京都に配置され、
自社線のほか、JR四国、JR九州、第三セクター鉄道、私鉄の検測にも使用されている。
キヤ141-1・2
下関方先頭車で、信号設備検測装置、通信設備検測装置が搭載されているほか、便・洗面所が設置されている。
キヤ141-2(近キト)
2002.2新製
2016年12月24日 柘植駅にて
キクヤ141-1・2
金沢方先頭車で、軌道検測装置、軌道中心間隔測定装置=TDM装置、軌道画像測定装置などを搭載、休憩室が設置されている。
キクヤ141-2(近キト)
2002.2新製
2016年12月24日 柘植駅にて
WDT64台車
2016年12月24日
WTR247台車
2016年12月24日
キクヤ141-2+キヤ141-2
2016年12月24日 柘植駅にて