DEC700形一般形気動車
概説
JR西日本では、国鉄から約400両の一般形気動車を承継したが、それらは2021(令和3)年現在でも約250両が主力車両として運用されており、経年約40年を超える車両の大量置換えが課題となっていた。これに備えて更なる安全性の向上、コスト最適化、製造工程の短縮、将来に向けた技術開発等の各種検証を目的に2021(令和3)年7月に本形式1両が量産先行車として川崎重工で製造された。
ディーゼルエンジンと発電機で発電した電力により、モーターを駆動して走行する電気式気動車で、バッテリーの搭載によるハイブリッド方式への変更も可能とするよう屋根上に艤装スペースを確保している。車両形式はDEC700形とされ、DECとは「Diesel Electric Car」の頭文字である。
従来からの共通コンセプトである「明るく、広く、静か、快適で、コストパフォーマンスに優れた車両」をもとに設計された。
車体および車内設備
車体は軽量ステンレスの片側2扉両運転台形で、車体長は連結面間距離を20,000mmとし、車体断面形状はコスト低減のため裾絞りのないストレート車体としている。車体構造は先頭部は衝撃吸収構造とし、構体は従来の工法よりもユニット化を進め、運転台や機器室をユニットとして車両に組み込むことで、工期の短縮やコスト低減を図っている。
車体の飾り帯は中国地域色である黄色としており、側面に流れるような五線譜にdecの音階(日本式でレミド)を表した音符に見立てたアクセントを配し、列車が走ることで流れるメロディに乗るように乗客や沿線住民の日常を明るく快適にすることを意図している。
屋根上に冷房装置2基と蓄電池を搭載している。
客室設備はワンマン対応で、客室内は線区の事情に応じて転換クロスおよびロングシートいずれにも対応可能な構造となっているが、量産先行車では1+2列の転換クロスシート(端部は固定式)を配置している。1位側に車椅子対応大型便所、3位側に主変換装置を装備する機器室を設置したため、1・3位側は窓が3個しか配置されていない。(2・4位側は7個)また、2・4位側は2列の転換クロスシートが基本であるが、便所の向かい側は1人掛けクロスシートと車椅子スペースとなっている。(定員90名)
主要機器
主回路システムは、コマツ製SA6D140HE-3(331kw)機関と発電機、主変換装置WPC18(S)、主電動機2台で構成され、機関と永久磁石同期発電機を組み合わせたエンジン発電機により発電した交流電力をPWMコンバータにより直流電力に変換する。なお、台車は動力台車がWDT70、付随台車がWTR252である。
これらシステムは従来の一般形気動車でも取組んできた電車との部品の共通化や運転取り扱いの共通化等を更に深化させている。
また、制御システムには、より安価で省配線化が可能な「E-CMS
(Ethernet based
Controland Monitoring System)」を開発して搭載している。
このほか安全・信頼性向上策として、電車でも採用されている「EB-N装置」を搭載。これは、運転台のマスコン・ブレーキハンドルに設置したスイッチを運転中に放すと5秒後にブレーキが掛かる装置である。また、脱線などの異常を検知する「車両異常挙動検知システム」を搭載し、異常時には緊急列車防護装置(TE)で知らせる。冗長化としては、電動空気圧縮機やATSの2重化などの対策が行われている。
おわりに
下関総合車両所新山口支所に配置され、2021(令和3)年8月16日より性能試験を開始、2024(令和6)年9月28日から11月24日までの土休日には姫新線津山-新見間の臨時快速列車「ハレのモリ」として、初めて営業運転を行った。
DEC700-1
写真は1・3位側を示す。2024(令和6)年秋に姫新線津山-新見間の臨時快速「ハレのもり」として営業運転を行ったときのもの。
DEC700-1(広クチ)
2021.7新製
2024年11月23日 新見駅にて