E657系特急形交直流電車

概説

　JR東日本常磐線の特急に使用されていた651系およびE653系の置換用として、2011～14（平成23～26）年に10両編成17本、計170両が近畿車輛、日立製作所、総合車両製作所横浜事業所で製造された。
　当初計画では、16編成160両の製造が予定され、2012（平成24）年春に営業開始、同年秋までに上野-いわき間の特急列車はすべて本系列に置換えられ、いわき-仙台間は系統が分離されてE653系による特急列車の運転としていわき駅では同一ホームで乗り継げることになっていた。ところか、2011（平成23）年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震（東日本大震災）で常磐線も一部区間が津波により被災、東京電力福島第一原発事故による放射能汚染により運休区間が生じていわき以北のE653系による特急列車運転計画は見送りとなり、常磐線特急の本系列への統一は「2012年度中」に、いわき-仙台間で運用される予定だったE653系は新潟地区への転用へと計画が変更された。
　本系列は「成田エクスプレス」に使用されているE259系特急形直流電車を基本とし、フルアクティブ動揺防止制御装置、車体間ダンパの装備により乗り心地向上を図り、防音床構造による遮音性能向上、WiMAXによる車内ブロードバンド環境の提供等、高品位の旅客サービスを採り入れた交流0,000V 50Hz、直流1500Vに対応した特急形交直流電車として設計された。
　編成は651系やE653系と異なり、いわき方（10号車）からTc+M2+M1+M2-100+M1-100+Ts+T1+M2-200+M1-200+T'cの10両固定編成（6M4T）である。
　車体は「Dynamic & Smooth」をテーマとしており、E259系を基本としたアルミダブルスキン構体であるが、屋上に特別高圧機器を搭載するため、屋根高さを105mm下げ、E653系と同じとしている。全長は20.5mで、先頭部はFRP製のキセとアルミの機械加工部材の組合わせで、運転室は高運転台となっている。主幹制御器は左手操作式ワンハンドルマスコンである。運転台の計器類はE233系やE259系と同様のLCD画面で、機器配置は(E653系に準ずる。前照灯はE259系と同様にHID（高輝度放電灯）とハロゲン式シ－ルドビ－ムの組合せとなっている。側出入口は上野方先頭車のみ片側２ヵ所、他は片側1ヵ所で、側窓はE259系と同様の連続窓で、熱線・紫外線吸収機能を持つ複層ガラスが採用されている。各車両には既存の車端ダンパの他に、車体間ダンパも設置されている。
　車体塗色はピンクかがった白を基調として、窓下に水戸偕楽園の梅をイメージしたピンクの帯を配し、裾部は紫がかった灰色、窓周りをアクセントとして黒色としている。
　内装は複合パネルを用いた構造で、客室内は木目とグレーの配色を組み合わせ、普通車・グリーン車とも回転リクライニングシート2+2列の座席配置で、シートピッチは普通車が960mm、グリーン車が1,160mmである。5号車（グリーン車）と6号車には車椅子スペースを備え、グリーン車には車椅子対応大型便所、乗務員室、車販準備室、多目的室が設置されている。各車とも客室端部にはフルカラーLEDによる案内表示器が設置されているほか、各座席にはコンセントが設置されてWimaxによるインターネット環境が整備されている。また、出入台にはE259系と同様に防犯カメラが設置され、セキュリティの向上が図られている。
　冷房装置は屋上一体形のAU734で、荷棚が風道を兼ねている。荷棚には幅70mmのステンレス板が張られて、鏡のようにして荷物の確認ができるようになっている。このほか屋根上にはM車にパンタグラフ（PS37A）を各1基と交直切替器が搭載され、各車にインターネット用WiMAXアンテナ、AM/FMアンテナを全車に設置、上野方先頭車には配信情報用のWiMAXアンテナも設置されている。また、電動車の屋根上にはブレーキ抵抗器の準備工事がなされ、取付座がある。
　制御方式は主変換装置によるVVVFインバータ制御で、主変換装置は主回路素子に低損失IGBTを用いたものを各電動車に搭載、制御単位は1C4Mである。主電動機はMT75B、補助電源装置（SIV）はSC95をM'車に、電動空気圧縮機（CP）は両先頭車と普通付随車に搭載している。乗り心地向上を図るため、先頭車とグリーン車はフルアクティブ動揺防止制御装置を装備している。また、将来の耐寒耐雪改造を考慮して機器間を塞ぎ板で覆う事ができる構造になっている。台車はE259系と同様にDT77・TR262系台車を基本とした軸はり式ボルスタレス台車で、電動台車がDT78、付随台車は先頭車の前位寄りがTR263、サハE657がTR263B、その他がTR263Aである。保安装置はATS-PとATS-PSを装備し、最高運転速度は130km/h。
　ブレーキ方式は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、直通予備ブレーキ、抑速ブレーキ、耐雪ブレーキ、駐車ブレーキを備える。
　2011・12（平成23・24）年度に8編成ずつ計160両（K1～K16編成）が製造されて勝田に配置、2012年（平成24年）3月3日に臨時特急「復興いわきフラガール号」で営業運転を開始、3月17日ダイヤ改正で定期列車として「スーパーひたち」、「フレッシュひたち」で営業運転を開始した。2013（平成25）年3月には651系とE653系の定期運用が終了して、常磐線特急の本系列への置換えが一旦完了した。
　2015（平成27）年3月14日ダイヤ改正では上野東京ラインが開業し、常磐線の特急は速達タイプが「ひたち」、停車駅の多いタイプが「ときわ」に改められることになり、同時に新たな着席サービスが導入されることになった。これに伴って本系列は対応改造工事が行われることになり、改造期間中の車両不足を補うため、651系の特急運用が一時的に復活した。そしてこの改正で、常磐線特急の一部が品川まで乗り入れることになり、増発用として 2014（平成26）年11月に10両編成1本（K17編成）が増備されている。
　また、2020（令和2）年3月14日ダイヤ改正における常磐線不通区間運転再開に伴い、2019（令和元）年にK18・19編成が増備された。

モハE657-1〜19

8号車として連結される中間電動車で、VVVFインバータ制御装置CI22を搭載する（電動車各車に搭載）。モハE657形各区分は屋根上にパンタグラフPS37Aを1基搭載しており、台車は電動車各車に共通するDT78。冷房装置は屋根上にAU734を搭載する（本系列各車に共通）。定員68名。写真は2・4位側を示す。
モハE657-4（水カツ）
2011.12新製
2012年5月6日　いわき駅にて

1・3位側を示す。
モハE657-3（水カツ）
2011.11新製
2014年6月8日　尾久駅にて

モハE657-101〜119

6号車として連結される中間電動車。基本構造はモハE657形0番代に準ずるが、後位側1列の座席が車椅子対応となっており、定員66名。グリーン車の車椅子対応大型便所に隣接する形となっている。写真は2・4位側を示す。
モハE657-112（水カツ）
2012.6新製
2016年7月31日　勝田にて

モハE657-201〜219

2号車として連結される中間電動車で、定員68名。写真は2・4位側を示す。
モハE657-204（水カツ）
2011.12新製
2012年5月6日　いわき駅にて

モハE656-1〜19

9号車として連結される中間電動車で、モハE657形0番代とユニットを組む。床下にSIV（SC95）を搭載。1位側に洋式便所、2位側に男子用小便所と洗面所が設置されている。定員64名。写真は2・4位側を示す。
モハE656-1（水カツ）
2011.5新製
2021年1月17日　土浦駅にて

写真は1・3位側を示す。
モハE656-10（水カツ）
2012.9新製
2020年7月26日　泉駅にて

2014（平成26）年に増備されたK17編成は屋根上のラジオアンテナが廃止、さらに2019（令和元）年に増備されたK18・19編成はWiMAXアンテナも廃止された。写真は4・2位側で、手前屋根上のアンテナが廃止されているのが分かる。
モハE656-18（水カツ）
2019.11新製
2020年7月26日　いわき駅にて

モハE656-101〜119

7号車として連結される中間電動車で、モハE657形100番代とユニットを組む。床下にSIV（SC95）を搭載。1位側に洋式便所、2位側に男子用小便所と洗面所が設置されている。定員64名。写真は2・4位側を示す。
モハE656-104（水カツ）
2011.12新製
2012年5月6日　いわき駅にて

1・3位側を示す。
モハE656-103（水カツ）
2011.11新製
2014年6月8日　尾久駅にて

モハE656-201〜219

3号車で、モハE657形200番代とユニットを組む。洋式便所、男子用小便所、洗面所が設置されている。床下にSIV（SC95）を搭載。定員64名。写真は2・4位側を示す。
モハE656-204（水カツ）
2011.12新製
2012年5月6日　いわき駅にて

クハE657-1〜19

10号車（いわき方）として連結される制御車で、CPを搭載する。台車はTR263（前位）、TR263A（後位）。定員60名。付属編成がない本系列では増解結を行うことはないが、いわき方の先頭車となる本形式については、スカート部に電気連結器取付の準備工事がなされている。
クハE657-13（水カツ）
2012.8新製
2016年1月23日　土浦駅にて

2015・16（平成27・28）年には、前面FRP強化工事が施工された。写真は施工後の形態を示す。なお、写真のクハE657-3には、2位側台車の横にキロ程補正装置（データデポ）が取付けられている。
クハE657-3（水カツ）
2011.11新製
2019年8月31日　土浦駅にて

1・3位側を示す。なお、2012（平成24）年度新製のK9編成以降は、K1〜K8編成とはスカートの仕様が異なる。
クハE657-10（水カツ）
2012.9新製
2020年7月26日　泉駅にて

2014（平成26）年に増備されたK17編成はラジオアンテナが廃止されたが、WiMAXアンテナは取付けられている。K18編成以降WiMAXアンテナも廃止されたため、この形態を持つのはK17編成のみとなっている。
クハE657-17（水カツ）
2014.11新製
2021年1月17日　土浦駅にて

クハE656-1〜19

1号車（上野・品川方）として連結される制御車で、CPを搭載する。台車はTR263（前位）、TR263A（後位）。本形式のみ側出入口は片側2ヵ所となっている。洋式便所、男子用小便所、洗面所を設置しており、定員44名。　
クハE656-3（水カツ）
2011.11新製
2014年6月8日　尾久駅にて

1・3位側を示す。写真はK9編成のクハE656-9で、K9編成以降はスカートの仕様がK1〜K8編成と異なる。　
クハE656-9（水カツ）
2012.8新製
2013年2月2日　常陸多賀駅にて

前面FRP強化工事施工後の1・3位側を示す。　
クハE656-7（水カツ）
2012.4新製
2020年7月26日　泉駅にて

2023（令和5）年10〜12月の茨城デスティネーションキャンペーンを記念して、2022（令和4）年12月より5編成のE6657系がE653系のリバイバルカラーに塗色変更されることになった。写真は最初に登場したK17編成のクハE656-17で、同編成は緑色となり、「霞ケ浦と帆曳船」のシンボルマークが側面に掲出されている。　
クハE656-17（水カツ）
2014.11新製
2023年4月8日　土浦駅にて