名古屋地区と伊勢方面を結ぶ快速「みえ」は輸送量増加傾向にあり、2013（平成25）年には伊勢神宮式年遷宮も予定されていたことから、さらなる輸送力増強が必要とされた。そこで2010・11（平成22・23）年に日本車輌製造で製造されたのが本グループである。
　当面の運用線区は武豊線として、2015（平成27）年春に予定されていた同線の電化開業以降は高山本線、紀勢本線などでの運用が予定されていたことから、都市圏輸送と将来のローカル輸送の両方に対応できるよう、各種機能や性能を有する気動車として、「安全性の確保」、「優れたサービスの提供」、「検修の省力化」を基本設計コンセプトとし、電車との部品の共通化を極力図ることとされた。
　キハ25形0番代（Mc1）＋キハ25形100番代（Mc2）の2両編成を基本とし、最大で5編成による10両運転が可能である。車両性能については、東海道本線・武豊線での運用を考慮して最高運転速度は110km/hとし、機関は各車に1基搭載、2両2機関による通常走行時には、1両に2機関を搭載するキハ75形2両編成の1機関カット時（2両3機関）と同等の性能を確保するものとされた。　
　車体は313系一般形直流電車（4次車）に準じており、ステンレス鋼製で、前頭部が普通鋼製である。車体および客室設備等は電車と気動車の違いによる点や、武豊線電化後、プラットホーム高さ760mmの高山本線等での運用を考慮して側出入口をステップ付とするための準備工事がなされている点などを除き、313系4次車と部品の共通化がなされ、コストダウンが図られている。なお、前面貫通扉上の前照灯は省略されている。車体長も313系と同じ20m級で、側出入口は両開き扉を片側3ヵ所に設け、半自動対応の押しボタンを装備する。
　客室内は出入口間に2人掛け5列のクロスシートを配置、出入口寄りは固定式、中間3列は転換式となっている。車端部は混雑緩和のため4人掛けロングシートとなっている。優先席の腰掛生地と枕カバー、優先席付近の吊手の色はオレンジ色とし、側出入口端部床面は黄色として識別を容易にしている。便所は313系と同様に車椅子対応大型洋式便所として、Mc1車の3位側に設置し、向かいの4位側は車椅子スペースとなっている。乗務員室も313系に準じており、運転台も313系と同様ワンハンドルとなっている。また、ワンマン運転に対応するため、運賃表示器や運賃箱などが設置されている。
　機関はカミンズ製電子燃料制御式ディーゼルエンジンC-DMF14HZDで、最高出力は382kW（520PS）であるが、機関および変速機の負荷を低減させるため、通常運転時は最大331kW（450PS/2100rpm）として異常時などにスイッチ操作により最高出力までに切り替えられるようになっている（制御切換モード）。変速機は変速1段・直結4段の自冷式液体変速機C-DW23である。
　台車はキハ75形の台車を基本として、313系3次車から採用されている異方性空気バネを搭載した軽量ボルスタレス台車C-DT67・C-TR255で、動台車には空転時の粘着性能を強化するため313系3次車と同様にセラミック噴射装置が搭載されている。
　電気システムについては、従来の気動車のような走行用機関の回転力を用いた発電方式や別搭載の機関により発電する方式ではなく、定速回転装置（CSU）により発電機を介して三相交流440Vを出力して交流100V（サービス系=表示器、機器ヒータ類）、直流100V（指令系=車両間引通し、および保安装置、補助電源等）、直流24V（機関、変速機等の制御電源およびワイパー装置、ワンマン装置等）にそれぞれ変換する方式とされた。保安装置、補助電源装置等は電車との部品共通化が図られている。空調設備や暖房機器、ドアレールヒータ、照明等のサービス機器関係についても電車と極力同じ仕様の機器が搭載され、電源も同様に交流440Vのものを各車に搭載している。
　このほか、313系と同様に乗務員や検修員の支援装置、運転情報記録装置として、モニタリングシステムが採用されている。また、2011（平成23）年度末までにJR東海全線・全車両で使用開始を予定しているATS-PT形自動列車停止装置を搭載している。　
　2010（平成22）年11月に第1・2編成（P1・P2）が、2011（平成23）年2月に第3～5（P3～P5）が落成して名古屋に配置、5編成10両が揃って武豊線で使用されたが、2015（平成27）年3月1日の電化開業により同線での運行を終了し、美濃太田に転属した。美濃太田転属後は高山本線、太多線で使用されることになったが、当初の計画どおり、側出入口のステップがプラットホーム高さに合わせて改造されている。

　老朽化したキハ40系およびキハ11形0・100番代を置き換えるため、増備された2次車で、2014・15（平成26・27）年に寒地向けのキハ25形1000番代＋キハ25形1100番代12編成、2015・16（平成27・28）年に暖地向けキハ25形1500番代＋キハ25形1600番代14編成の計52両が日本車輌製造で製造された。
　1次車（0番代）の基本コンセプトを発展させ、「さらなる安全・安定性の確保」と「さらなる低コスト化」を目指して設計変更が行われた。
　1次車を基本とした2両固定編成であるが、客室内はオールロングシートとなり、最高運転速度は95km/hとした点が大きく異なる。
　車体は1次車を基本としているが、側外板と妻外板のビードが廃止され、側窓吹き寄せ部の外板がダルフィニッシュ仕上げからヘアライン仕上げに変更された。側出入口は当初からステップ付構造で、側引戸は車内外ともにステンレス製である。オールロングシートとなったため、側窓は313系2000番代に準じた配置に変更された。また、スカート部には「鹿衝撃緩和装置」が搭載されているほか、1次車では左右に分かれていた前面の行先・列車種別表示器は、助士席側窓上の1ヵ所に集約された。
　客室内は上述のとおりオールロングシートに変更されたが、1人当たりの有効座席幅は1次車の車端部ロングシートよりも10mm拡大した460mmとなった。また、スタンションポールから離れた部分の吊手高さは1,600mmとなり、吊手高さは1,600mm、1,700mm、1,800mmの3種類となった。室内灯はJR東海の在来線気動車としては初めてのLED照明に変更され、配置と数の見直しがなされて冷風吹出口の形状が変更された。床敷物については1次車ではグレーの濃淡であったが、1色に変更された。ワンマン設備については、整理券発行器が1両あたり2台から1台に変更された。便所については1次車と同様にMc1車の3位側に設置されているが、照明のLED化、洗浄スイッチの非接触式から接触式への変更などがなされている。
　機関は1次車のC-DMF14HZDを基本として、給気冷却方式を空冷式から水冷式へ変更したC-DMF14HZEで、1次車と異なり最高運転速度を95km/hとしていることから定格出力を316kW（430PS）とし、制御切換モードは廃止された。
　変速機については1次車のC-DW23を基本として出力フランジの取付方法を変更して信頼性とメンテナンス性を向上したC-DW23Aとなっている。　
　2次車においては、東海道新幹線のN700A系に搭載された台車振動検知システムを基本として気動車用に開発した振動検知装置を、JR東海の在来線車両では初めて搭載している。これは、台車に搭載した振動センサにより常時監視を行い、振動検知装置を通じて異常があった場合に運転台や車両区の地上端末に表示し、軽微なうちに適切な対処を施すことに可能とするものである。
　また、動力伝達軸落下防止枠については、増設および形状変更を行い、台車や発電機などに動力を伝達している動力伝達軸に異常が発生し、落下しそうになった場合に確実に保持できるようにしている。
　減速機については、台車枠での支え構造が改良され、従来の割ピンと溝付き六角ナットで固定する方法から、くさび構造で保持した上でボルト・ナット2ヵ所でより確実に固定する構造に変更され、これに伴って動台車はC-DT67Aに変更された。また、空転滑走時の粘着性能強化のため1次車で動台車に搭載されていたセラミック噴射装置については、2次車においては容易にセラミック噴射量、噴射速度の調整が可能なミュージェットが採用されている。
　燃料タンクについては、飛石等による亀裂防止ののため板厚を増やして強度向上が図られた。
　上述のとおり「鹿衝撃緩和装置」が搭載されたが、これはスポンジゴムにより、衝突した鹿を線路外に押しのけるというものである。
　寒地向けの1000番代は、2014（平成26）年9月に3編成が落成して12月1日より高山本線（岐阜-猪谷間）、太多線で営業運転を開始、2015（平成27）年6月までに12編成24両が製造された。キハ25-1001～1008＋キハ25-1101～1108（P101～P108編成）は美濃太田に、キハ25-1009～1012＋キハ25-1109～1112（M1～M4編成）は名古屋に配置されたが、M4編成は2017（平成29）年3月に美濃太田に転属した。　　
　暖地向けの1500番代は2015（平成27）年6月から2016（平成28）年1月にかけて14編成が落成し、M101～M114編成としてすべて名古屋に配置された。2015（平成27）年8月1日より紀勢本線亀山-新宮間と参宮線で運用を開始した。
　本系列の増備により、2016（平成28）年3月26日のダイヤ改正でキハ40系とキハ11形0・100番代は淘汰され、JR東海において国鉄時代に製造された一般形気動車はすべて置き換えられた。